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ドキュメンタリー映画 『福島は語る』 を見る    [私の映画観]

東日本大震災から8年になろうとしています。
東京オリンピックに続き、大阪万博も決まって、まるで東日本大震災から目を逸らすように仕向けられているみたいと感じています。

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2012年11月に、震災後すぐに映画の上映を再開した「みやこシネマリーン」(岩手県宮古市)を撮影するために東北を訪ねた時に撮った写真です。
1年8ヶ月経っても瓦礫が撤去されただけで痛ましい姿でした。

家の土台だけ残っている姿を目の当たりにして、「どこか撮影をしますか?」「(車を)降りますか?」と問われても、「いいえ」と答えるのが精一杯でした。
残された土台から、ここは玄関、ここは台所、ここはお風呂場と想像できて、そこに暮らしがあったこと、家族を、笑顔を感じると涙が溢れそうで、それを堪えるのが精一杯でした。
今の私には申し訳ないけれど福島は撮れないと思いました。

161 福島は語る.jpg

2月5日、被災した方々の言葉を紡いだ作品 『福島は語る』 を見ました。
100人を超える方々にカメラを向け話を聞いた土井敏郎監督は、14人の方の“福島を語る言葉”を紡いで170分の作品を誕生させました。

土井監督のお話では最初に(14人の話を)繋いだ時は5時間を超えていたそうで、半分近い170分に短くされる作業はそれはそれは大変だっただことでしょう。

「短くする中で、そのままの人が一人います」とのこと。一番長く語られる杉下初男さん。
杉下さんの表情は途中で全く別人のようになります。ずっと心の奥に抑え込んできた、面と向かうことを避けてきた深い深い悲しい出来事に、いつか、どこかで、きちんと向き合わなければならないと思っていたことに、立ち向かう姿が写っています。

カメラがあるという特殊性もあるけれど、人と人との出会いなのだろうと思いました。自身の心の奥底を覗くという行為は、だれもがする、誰もができることではない。そこに、土井監督とカメラが力を貸したのです。
杉下さんは石材店を営んでいました。石に雨が当たるとその水分が石の中に浸み込んでゆく。放射能も浸み込んでゆく。材料として仕入れていた石は処分もできないまま野ざらしになっていました。その石に冷たい雨が降り注ぐ。
杉下さんと土井さんがこのタイミングで出会ったからこそ紡がれた言葉の塊りが、静かに多くのことを語りかけてくる作品でした。14人の言葉の向こうにたくさんの福島が見えてきます。

2019年3月2日(土)~ K's cinema
2019年3月9日(土)~ ユーロスペース
など全国一斉公開されます。

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コメント 4

riverwalk

震災を実体験した人の口から出た言葉なんですね。
記憶から消し去る事は出来ないと思います。
上手く言えませんが、この事実を残していく事が大事だと思いました。
by riverwalk (2019-02-11 21:21) 

森田惠子

riverwalkさん>ある仮設住宅の上映会を撮影に行った時、上映会の後にお茶会があって、ある女性が当日のことを話してくださったのです。
質問したわけではないのに、その日の様子を話してくださって(夫が亡くなっている)、「でも、私は娘と一緒にここさ居られるから幸せなんだ」と。
聞きながら、ああ、辛いけれど幸せだと言い聞かせているんだなぁ~と感じて手を握ったのを覚えています。
by 森田惠子 (2019-02-11 22:19) 

安田秀一

ご無沙汰してます。7月21日郡山市での「旅する映写機」上映決定おめでとうございます。カナリア映画祭実行会も応援に参ります。盛況を願っています。
by 安田秀一 (2019-06-05 23:26) 

森田惠子

安田秀一さま>ありがとうございます!
3作品を見てくださって、『旅する映写機』に決定しました!
私も郡山へ伺います。
by 森田惠子 (2019-06-07 12:00) 

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